バイオレンス: TRPG

VIOLENCE - The Roleplaying Game of Egregious and Repulsive Bloodshed

VioLence™にようこそ、このクソ野郎。

VioLence™は、他社から出ているダンジョンズ&ドラゴンズ®によく似ている。お前とお前のダチは、想像上の世界に存在する人物を演じることになる。迷路をさまよい、ドアを蹴り破り、その先にいる者を全てぶち殺し、有り金全部はぎ取るのだ。D&D®との主な違いは、エルフやドワーフ、魔法の呪文などといった戯言が飛び交う、どこかの三流ファンタジー作家が書いたような世界ではなく、現代社会が舞台だということだ。お前が蹴り破る扉は、地下迷路の扉ではない――地下鉄にいるのでなければな――上品で、誠実で、ただ真面目に働き生活する人々のものだ。殺す相手はボール紙の「モンスター」ではない。このゲームで敵として定義され、殺しても良いとされているもの――すなわち人間である。……(後略)

VioLence™は、なんというか、反=TRPG的な代物である。TRPGを骨だけにして、苦痛と血と暴力でもう一度肉づけしたらこうなったという感じ。ただのくだらないTRPGもどきのようにも思えるし、既存のゲームに対する痛烈な風刺ともとれるし、暴力のお墨付きを与えられたプレイヤーの行動を倫理的に問い直す深刻な作品のようにも見える。なんとも判断がつきかねるゲームである。著者は匿名のデザイナーXその本名はグレッグ・コスティキャン。パラノイアやスター・ウォーズ:ロールプレイングゲームをデザインし、数々の賞を受賞している有名ゲームデザイナーである。

ルールブックはデザイナーXによる業界への悪罵や、プレイヤーに対する金銭の要求で満ちている。キャラメイクのダイスは、ゲームデザイナーに郵便でUSドルを送ることによって何回でも振り直すことができる。ゲームに用いるダイスはVioLence™のロゴ入り(値段がふつうのダイスより少し高い)でなければならない。云々……。

ゲームの流れ

VioLence™のゲームは、基本的にはダンジョンズ&ドラゴンズ®のようなクラシカルなTRPGと同様に進行していく。ただし、ダンジョンは年金生活の老人が住むアパートの一室に置きかえられ、モンスターは善良な市民に置きかえられ、手に入るアイテムはステレオ、コンピュータ、宝石などの金銭的価値があるものに置きかわる。

ゲームのシナリオは――いまぼくが適当に考えたやつだが――おおむね次のようになるだろう。

PC1たちはスラム街の廃教会で寝泊まりしているクズの犯罪集団である。いつものように日銭を稼ぐために強盗に押し入ると、部屋の中から大量のコカインが出てきた。小躍りしてそれを持ち帰るPCたちだが、実はそれはロス・セタス2のものだった。メキシコから凶悪なやつらがPCたちを殺そうと大挙してやってくる……。

こんなシナリオばかりだから、PCはつねに警察に追われることとなるし、キャラのロスト率も高い。もっともこのTRPGでキャンペーン3をやろうとする奇特な人はいないだろうが。

キャラメイク

TRPGには凝ったキャラメイクがつきものだ。キャラの名前をきめて、ダイスを振って細々とした能力値を決定する。顔の絵なんか描いてみるのもいいだろう。TRPGのルールブックにはこうしたことを書きこむためのキャラクターシートが付属しているのがふつうだ。

だがこのゲームのキャラクターシートは白紙である。正確に言えば、「裏表紙の内側(表34)」がキャラクターシートになっている5。それをコピーして使おう。

キャラの能力値は以下の5種類だ。

  • 筋力――お前の強さ。
  • 耐痛力――どれほどの痛みに耐えられるか。
  • 耐久力――死ぬまでに受けられるダメージ。
  • 迫力――お前がどれくらい怖く見えるか。
  • その他

「その他」の能力値は、上の4種類どれにも当てはまらないような判定につかう。まったくスキのない完璧なゲームシステムである。

キャラは他にも、ヒット・ポイント(HP)とペイン・ポイント(PP)をもっている。ヒットポイントがゼロになればそのキャラはしぬ。ペイン・ポイントがゼロになるとそのキャラは泣きわめいてしょんべんを漏らし、どこのものとも知れぬ藪神に許しを請うことしかできなくなる。

余談: 女キャラクターを作るならデカパイにしろ

トゥーム・レイダーをプレイしてこい。
Alison Carroll, the official Lara Croft model for Tomb Raider: Underworld at Festival du jeu vidéo 2008 (Paris, France).CC BY-SA 3.0

3. 性別を選べ。まあお前のような人間のクズはたいてい男だろうが、女キャラクターをやってみろ。その場合は疑問の余地なくデカパイに設定しろ。男プレイヤーに人気のある女キャラクターって奴は、ほとんどがデカパイだろ。信じられないなら「トゥーム・レイダー」をプレイしてこい。「トレスパッサー6」でも構わない。見てきたか?お前の左乳首には入れ墨が入っている。それがお前のライフ・メーターだ。左乳首を見下ろせば、お前があとどれくらいで薄汚い死を迎えるかがチェックできるって寸法だ。……(後略)

p3、キャラクターの作成

左乳首に入っている入れ墨がライフメーター、というところが好きなので引用。しょうもないんだけどメタなゲームシステムの説明になってるところ、変に真面目なところがいい。左乳首をチラチラ確認する極悪犯罪者というのもなかなか格好がつかない。

スキル

このゲームに存在するスキルといえば、まあ徒手格闘とか、ハンドガンや、拷問錠前間抜けにウォーウォー唸るクソ知識7などだ。推して知るべし。

特筆すべきは文字を読む文字を書く算数といったスキルだ。プレイヤーたちは基本、クズで無学な犯罪者だから、これらのスキルを取らなければ「止まれ」の標識より難しい文字を読んだり、繰り上がりのある足し算をしたりすることはできない。インテリ犯罪者のロールプレイをしたい人は気をつけよう。

装備品

Röhm RG-14はサタデー・ナイト・スペシャルだといわれる。by Winged BrickCC BY-SA 3.0

このゲームには――当然のことだが――いろいろな武器が登場する。警官がもってるリボルバー(38口径)とか、サタデー・ナイト・スペシャル8とか、ソードオフショットガン9とか、でけぇナイフとか、25セント玉がいっぱい詰まった靴下とか、ミキサー10とか、ベルトサンダ11とか、アルカリ性溶剤とかだ。

各武器にはダメージ(ヒットポイントに及ぼされる)とペイン(ペインポイントに及ぼされる)が設定されている。ダメージが高いけどペインは低い、すなわち被害者を苦しませずに死なせる武器や、ダメージは低いけどペインが高い、つまり苦しみばかり大きくてなかなか死ねない武器というのがそれぞれあるわけだ。前者の代表はアサルトライフルやショットガン。後者にはアルカリ性溶剤やベルトサンダが該当する。

衣類のデータもあるが、これらは防具として着るわけではない12隠蔽値をかせぐために着るのだ。各武器にはプラスの隠蔽値が設定されていて、衣類には0もしくはマイナスの隠蔽値が設定されている13。つまり、ビジネス・スーツを身にまとって真人間のフリをしたり、トレンチコートを着たりすることでマイナスの隠蔽値をかせぐことができる。

装備品の隠蔽値を合計して、それがプラスの値になっている場合、警察に関心を持たれる確率が高まる。チンケなスニーカーによれよれのジーンズ、ストリートファイターのキャラが描いてあるTシャツ姿でAK-47を持ち歩くのはやめとけ、ということだ。お兄さんとの約束だぞ。

ワンダリング被害者表

このゲームを進めていくうえで、「ちょっとそこらへんを歩いてるやつをぶっ飛ばしたいんですが」という状況はたいへんよくある。そんなときに活躍するのがワンダリング被害者表である。ダイスを振るだけで、そこを歩いているのが乞食なのか肉体労働者なのか、どこぞの企業の管理職なのか決めることができる。また同様にランダム建物表というのもあって、「ちょっとそこらへんの家に押し込み強盗に入りたいんですが」となったとき、円滑に建物の種類や間取りを決定することができる。

そうそう、建物に押し入るときは14ぜひ適当な紙を用意して間取り表を作成しよう。間取りは楽しい。Sims3なんかプレイしていると家の間取りや内装を考えるところで一日(現実世界の)が終わってしまい肝心の人生シミュレーションを遊べるのが翌日からになってしまうことがある。「間取りの手帖remix」も面白かった。うん。余談でした。

どんな人たちとプレイするべきか

さて、あなたがなけなしの金をはたいてこのゲームのルールブックを購入し、誰を誘ってプレイしようかとSNSの友達欄をいったり来たりしているとしよう。どんなやつを誘うのかはたしかに重要な問題である。

結論からいうと、倫理観がなく、柔軟なやつを誘ったほうがいい。ドラッグ・強盗・殺人・レイプが頻出するゲームだから、もちろん倫理観はなければないに越したことはない。さて、つぎは柔軟性のほうだ。要するにこのゲームは、独創的な悪罵・ゲラゲラ笑える下ネタ・仲間内でさえ思わずドン引きするような拷問などで、キャラが死ぬまでに如何に芸術点を稼げるか競うものだから、柔軟性やアドリブへの対応力は重要である。どうせゲームマスターもろくなシナリオを用意してきていないだろうから、全部ぶちこわすつもりで好き勝手やろう。

英語版ルールブック

実はこのゲーム、英語版のルールブックがGreg Costikyan公式ホームページで、Creative Commonsライセンス下で公開されている。まあ、これを読んでいる方は日本語ネイティブ話者が多いと思うので日本語版ルールブックを株式会社雷鳴から購入してデザイナーにお金を落としてあげよう。約束だゾ。

サーベイ

VIOLENCE – The Roleplaying Game of Egregious and Repulsive Bloodshed

  1. いわずもがなプレイヤーキャラクタのこと。
  2. メキシコの凶悪な麻薬カルテル。
  3. 同じキャラで何度もプレイするスタイル。逆は単発(one – shot)プレイ。
  4. 印刷用語らしい。いわゆる表紙が表1、表紙の裏が表2、裏表紙の裏が表3、裏表紙が表4。文字に起こしてみるとたいへんややこしい。
  5. もちろんそこには何も書かれていない。ええ。
  6. 検索してもパシフィック・リムのKAIJUしか出てこなくなってしまったが、おそらくTrespasser (ゲーム) – Wikipediaのこと。
  7. ブードゥー教、サンテリア、心霊研究などの知識。自分のアパートの前に死んだニワトリが落ちていたとき、その意味を知る手がかりになる。アメリカが移民社会だから入ってるのかな?
  8. 安価で粗悪な濫造銃。
  9. MADMAXでおなじみ。ショットガンの先端をのこぎり(saw)で切り落として拡散性を高めたもの。
  10. 台所で使うほうのミキサー。食材をいれる透明な部分をこわして、刃を剥き出しにしてつかう。
  11. やすりのついたベルトが高速で送り出されてくる研磨機。中学校のとき、技術の授業でみた覚えがある。木工の際など、何かと便利。
  12. 防弾チョッキなどのデータもあるにはあるが、はっきり言ってやる気がない。どうせすぐ死ぬからだろう。
  13. 隠蔽値が0の衣類は、まあロールプレイのためというかキャラの肉付けのために着ることになる。
  14. ルールブックにも書かれていることだが