書評

胎界主初読者のために、第一話「使い魔」を1万文字かけて解説する

みなさん、web漫画「胎界主」読んでますか? わたしは読んでます。胎界主は慣れるとめちゃくちゃおもしろいことはもう間違いないんですが、初読者の離脱率が高いことでも知られています胎界主第三部がはじまり、弊ブログの胎界主記事のアクセス数も増えてきたため、ここらで初読者にむけて第一話の解説を書いてみようかなと思います。

「黒死館殺人事件」小栗虫太郎

 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」は、誰が言ったか日本三大奇書のひとつ、アンチミステリの最高峰として知られている。衒学的という評価がここまでふさわしい小説もそうそうないだろう。

WEB漫画・胎界主を読もう

最近WEB漫画「胎界主」をようやく読み、そして感動した。いや、こんなに世界の真実がたくさん書いてある漫画ってあるんですかね!!?作者は尾籠憲一(鮒 寿司)氏。フルカラー漫画をこれだけの密度で描き上げる力はすさまじいとしか言いようがないです。「胎界主」はその全篇が作者のサイトで無料公開されているのでみなさん読みましょう。

「ゲルマニア」タキトゥス

「ゲルマニア」は古代ゲルマン民族についての最古の記録であり、まさに帝政ローマをおびやかさんとする民族について、その質素剛健で勇壮な姿をえがきだしている。筆者はタキトゥス。ネルヴァ・トラヤヌス帝時代の大歴史家であり、共和主義者。抑制的ながら鋭い筆致はまさに名人芸だ。ただしティベリウス帝に対しては点が辛い。

「ホワイト・ライト」ルーディ・ラッカー

「ホワイト・ライト」はなんだかとんでもない小説である。主な題材となっているのは無限の概念で、その中でも特に連続体仮説が取り扱われている。これは、集合論という分野そのものの成立に深くかかわっており、集合論の王道に位置する命題だ。連続体仮説でひとつ小説を書き上げることなんてできるのだろうか。それがどうやらできてしまったらしい。

「ココナットの実」夢野久作

この話は夢野久作の短編のなかでもそう有名なほうではないと思う。ところがこれは、悪魔のような美少女がブルドックみたいな成金と身長2mの童貞インド人と骸骨みたいに痩せこけた共産党員に惚れられていて、それでいて誰のものにもならずに神戸海岸通のレストランでひとり高笑いをする……という最高の短編なんである。

「生き延びるためのラカン」斎藤 環

ラカンはフロイトの唯一にして真正な後継者である。……などと書くとどうも宗教じみているが、まあそこそこ当たっているのではないか。彼はフランスで最も偉大な精神分析家であり、また哲学者であり、その理論は晦渋で知られる。一方、ソーカル事件で槍玉に上げられた人物としてその名を記憶している人もいるだろう。

バイオレンス: TRPG

VioLence™は、他社から出ているダンジョンズ&ドラゴンズ®によく似ている。お前とお前のダチは、想像上の世界に存在する人物を演じることになる。迷路をさまよい、ドアを蹴り破り、その先にいる者を全てぶち殺し、有り金全部はぎ取るのだ。

「無門関」

「無門関」は、南宋の禅僧・無門慧開の手になる禅の公案集であり、禅者にとってのジャズスタンダードバイブルのようなものである。今のは忘れてください。さて公案というのは禅匠が弟子にあたえる問い、課題のようなものだ。それは逆説的であり超越的で、矛盾に満ちている。少し見てみよう。

「完全自殺マニュアル」鶴見済

この本はたいへんに有名である。初版は1993年、すなわち平成5年の7月。まえがきなんかは前世紀末の香りが漂うが、全体としては思想のない自殺マニュアル(ケーススタディつき)となっている。