はじめに
競馬がけっこう好きだ。はじめて見た日本ダービーは2016年(マカヒキ)で、サトノダイヤモンドとの壮絶な叩きあいを記憶している。
あと場所柄、宝塚記念を見にいくことが多い。マリアライトがキタサンブラックとドゥラメンテを差し切ってぼくの馬券が紙くずになったり1、ミッキーロケットが第4コーナー回ってきてすごい迫力で早め先頭に立ったかと思ったらおまけに香港のワーザーなんか来ちゃってぼくの馬券が紙くずになったりした2ことが思い出ぶかい。和田ジョッキーの粘り込みよ……。
さて、本書はブルーバックスに収録されており、競走馬の歩様や骨格、筋肉、心肺機能、馬具や馬場などについてくわしく記述されている。細かい記述もたいへん充実しているが、ちょっとだけ見ていこう。
最速のギャロップ
馬が速くはしるとき、四本の肢が同時に地面からはなれるタイミングがあるか、という賭けは、1877年のマイブリッジによる撮影で決着した。それまでは馬の4本の肢が走るときにどのように動いているのかを捉えたものはいなかったわけである。
たとえば、1821年のテオドール・ジェリコの絵画では、馬の走り方は実際とはだいぶ違い、前肢と後肢をいっぱいに伸ばしながらジャンプするように描かれている。まあそのことで絵画の価値が毀損されるわけではないんだけどもね。
閑話休題。上の連続写真のような左後肢→右後肢→左前肢→右前肢という肢の運びかたが、ギャロップの一例である。この場合は右手前の交叉襲歩という。左手前の場合は右後肢→左後肢→右前肢→左前肢となる。馬はコーナーを曲がるため・肢の疲れを軽減するためなどの理由から、手前を変えながら走る。
なぜこの走りかたが良いかというと、ストライド(歩幅)が稼げるからだ。ちなみに人間が四つん這いをするときや両生類は左後肢→左前肢→右後肢→右前肢という歩きかたになる。みんなも部屋で試してみよう。ぼくが書いた記事で四つん這いになる大人がいるかと思うとなんとなくうれしい気持ちになりますね。今のは忘れてください。
スプリンターとステイヤー
昨今は競馬界でも分業化が進んでおり、距離適性は勝敗をわける大きな要素となっている。長距離が得意な馬をステイヤーといい、中距離(特に1マイル戦、約1600m)が得意な馬をマイラー、短距離が得意な馬をスプリンターという。
ステイヤーといわれると一昔前ならライスシャワー、メジロマックイーンの名が挙がるのだろうが、最近はステイヤーズステークスを3連覇したアルバートの印象が強いのではなかろうか。
お次はマイラー。中距離ということでなんでもマイラー扱いされるみたいなことがあり印象に残りにくいが、モーリスなど。
スプリンターとしては、ロードカナロアの名前を挙げたい。短距離帝国・香港の馬を蹴散らして香港スプリントを2連覇した名馬である。三冠牝馬アーモンドアイの父としても有名になった。
さて、スプリンターとステイヤー、身体のどこに違いがあるのだろうか。実はそれは一概には言えないのである。なぜなら、競馬が行われる1000〜3600mという距離は人間に例えると500m〜1500m程度の中距離走に相当し、100m走とマラソンのように大きく異なっているわけではないからだ。
人間の短距離走・長距離走の適性には収縮が速く疲れやすい速筋と、収縮が遅く疲れにくい遅筋の割合が関係しているといわれる。マラソン選手では筋肉の80%近くが遅筋で占められている人もいるという。競走馬はそもそも遅筋線維が8%-12%程度しかないためこれでステイヤー・スプリンターを区別することはできないが、トレーニングによって速筋線維がタイプⅡbからⅡaに変化し、疲れにくくなるということはあるようだ。
その他本
競走馬の骨格、蹄と蹄鉄、心臓や血液、馬具の役割など、これ以外にも詳しく書かれている。馬場の断面図や坂路コースの様子なども参考になった。この本を熟読して馬券が当たるようにがんばりたいと思います。いや、そういう本ではないんだけど。しかし来年の宝塚記念は当てたいです。がんばるぞ!
こんな人におすすめ
- ひょんなことから競走馬に転生してしまった人
- 馬のからだに詳しくなりたい人