地図と領土が交わるところで

「地図と領土」といえばミシェル・ウエルベックの小説である。孤独な芸術家ジェドが世捨て人の作家ウエルベックと出会う物語だが、このタイトルは言語学者コージブスキーの「地図は領土ではない(A map is not a territory)」という言葉が元になっている。

胎界主初読者のために、第一話「使い魔」を1万文字かけて解説する

みなさん、web漫画「胎界主」読んでますか? わたしは読んでます。胎界主は慣れるとめちゃくちゃおもしろいことはもう間違いないんですが、初読者の離脱率が高いことでも知られています胎界主第三部がはじまり、弊ブログの胎界主記事のアクセス数も増えてきたため、ここらで初読者にむけて第一話の解説を書いてみようかなと思います。

「黒死館殺人事件」小栗虫太郎

 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」は、誰が言ったか日本三大奇書のひとつ、アンチミステリの最高峰として知られている。衒学的という評価がここまでふさわしい小説もそうそうないだろう。

机の裏に地図を貼る

 先日のWIREDにおけるやくしまるえつこのインタビューはすごかった。このインタビューでのやくしまるの発言はSFに満ち満ちている。究極のプライヴェートとしての遺伝情報。人類をすげ替えるための偽装工作。冷蔵庫は家電の中でいちばん人間に近くて、固定電話の受話器は過またない。

詩とつながり

中原中也の「月」という詩にこんな一節がある。

WEB漫画・胎界主を読もう

最近WEB漫画「胎界主」をようやく読み、そして感動した。いや、こんなに世界の真実がたくさん書いてある漫画ってあるんですかね!!?作者は尾籠憲一(鮒 寿司)氏。フルカラー漫画をこれだけの密度で描き上げる力はすさまじいとしか言いようがないです。「胎界主」はその全篇が作者のサイトで無料公開されているのでみなさん読みましょう。

ザ・ゲームに負けた

いい遊びをおしえよう。どうやらゼロ年代ごろに流行っていたようだが、「ザ・ゲームThe Game」というゲームがある。これがどういうものか知るには、ひとまずWikipediaの説明を読んでみるのがいいだろう。よく練られたルールはプレイヤーを飽きさせず、競技人口はいまも刻々と増え続けている。

彫刻はなぜ無限の絵でできていないのか

竹内外史が芸術についておもしろいことを言っていた。

空想から空想へ――社会主義の臨界点

 マルクスのよき理解者・エンゲルスによって書かれた「空想から科学へ」は、社会主義の入門書として名高い。その構成はよく練られていて、第一章は空想的社会主義者たちを賛美すると同時にその限界を示し、第二章で哲学・形而上学――とくに弁証法――について考察し、第三章では資本主義の死滅と社会主義の必然的な登場が語られる。

ミカドの禁忌――「金枝篇」より

フレイザー卿の「金枝篇」は、神話・呪術・宗教をめぐる壮大な書物である。そして、この本のどこがいけないかというと、あまりにもカッコよすぎるところだ。正確な研究書というのは往々にして泥臭く、深い滋味はあるけれどもあからさまなカッコよさはない。その点、金枝篇は「本からできた本」「安楽椅子の人類学」というそしりを免れえない。